肝芽腫-抗がん剤の副作用 home

抗がん剤の副作用について、肝芽腫で使用する薬剤等について記しますが、全員に必ず出るものではありませんので心配のし過ぎは禁物です。要は出た場合に「どう対処するのか」です。

ただし親としては、「同じような治療をした他の子たちはどうだったのか」ということも知りたいことのひとつだと思いますので、「肝芽腫の会」会員の子どもたちに実際に起きた副作用・晩期合併症・などを聞いてみました。(*ナンバーは会員番号です)。また、「抗がん剤の副作用について」はすべて医師のチェックを受けています。




1. 抗がん剤全般に共通の副作用
2. 薬剤ごとの副作用
3. 実際に出た症状(会員への聞き取り)



  1.抗がん剤全般に共通の副作用 

骨髄抑制(*血を作る力が低くなる)
白血球減少 …… 感染症を起こしやすくなる。好中球も白血球の中の成分。
貧   血 …… ひどくなった時は輸血
血小板減少 …… ひとくなった時は輸血
脱   毛
粘 膜 障 害



  2.薬剤ごとの副作用 

シスプラチン (商品名:ブリプラチン、ランダ)
抗がん剤の中でも特にひどい悪心・嘔吐
腎障害 …… 薬を中止すれば改善します。
低カルシウム・マグネシウム血症
聴神経障害 ……
総量が300mgを超えると高音域に障害が出始めます。また、総量600mgを超えると難聴となることが多くなります。薬を止めても聴力は戻りません。
性腺障害

THP-アドリアマイシン (商品名:ピノルビン、テラルビシン)
心筋障害 …… 総量300mgを超えると心毒性が現れることがあります。
二次がん ……
二次がんとは、5年から10年後に白血病などの血液のがんになるというものです。総投与量に比例して発症率は高くなりますが、総量が少なくても可能性はゼロではありません。また総投与量が多いからと言って必ずなるものでもありません。多くの病院では再発時などを除いて、投与の上限が定められています。

イフォスファミド (商品名:イフォマイド)
出血性膀胱炎……
抗がん剤を投与する時に予防薬(ウロミテキサン)も一緒に投与します。それでも尿潜血がある時は、降圧利尿剤(ラシックスなど)を投与して予防します。
けいれん

エトポシド (商品名:VP-16、ベプシド、ラステッド)
二次がん ……
エトポシドの場合は、二次がんの発症は少し早く2年くらいまでです。その後発症することはあまりないと言われています。
アナフィラキシー
粘膜障害 ……

口の中・腸の内側など身体のいろいろな部分の粘膜に障害が起きるため、「物を飲み込むのが痛い」など痛みを訴えることが多い。

カルボプラチン (商品名:パラプラチン)
腎障害

メルファラン (商品名:アルケラン)
粘膜障害
腎障害

チオテパ (商品名:テスパミン)
粘膜障害
腎障害

イリノテカン (商品名:トポテシン、CTP-11)
下痢

トポテカン (商品名:ハイカムチン)
下痢

ソラフェニブ (商品名:ネクサバール)
皮膚症状
出血
肝機能障害
分子標的薬に分類される薬剤で、小児肝芽腫では臨床研究として投与される場合もあります。

副作用は上記のもの以外にも、通常の化学療法ではあまり起こらない副作用もあるので、『緊急時に十分対応できる施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで投与が適切と判断される症例のみ投与』と薬品添付書に書かれています。

G-CSF製剤 (商品名:グラン、ノイトロジン、ノイアップ)
骨痛
発熱
二次がん …… G-CSFとエトポシドやアドリアマイシンを一緒に使ったグループは、そうでないグループよりも二次がんの発症率が高かったという論文もありますが、二次がんそのものの発症率は全体の1%以下です。
急激な回復期に間質性肺炎や急性呼吸窮迫症候群を起こすことがあります。




  3.実際に出た症状 (会員への聞き取り) 

骨髄抑制(こつずいよくせい)
(No.001) CITAは1コースにつき1回弱血小板輸血をした。ITECになってからは1コースにつき、赤血球輸血を1階と血小板輸血を1〜2回していた。好中球がゼロになることもあったが、G-CSF(好中球を増やす薬)は使用しなかった。
(No.007) 毎回輸血した。ノイアップ(G-CSF)も毎回使用した。
(No.010) 血小板は毎回、赤血球も数回やった。
(No.017) 毎回、血小板と赤血球は輸血した。ノイアップ(G-CSF)も毎回使用した。
(No.018) 治療の後に毎回血小板を輸血した。また、貧血が進んだ時に赤血球も数回輸血した。白血球をあげるための「ノイアップ」は毎回使用した。

副作用は出なかった
(No.006) 0才で抗がん剤の量も半分だったので、副作用らしい副作用は出なかった。

脱   毛
(No.001) シスプラチンとTHP-アドリアマイシンの時は半分程度抜けたくらいだったが、6コースやってAFPが正常値化しなかったので、ITEC(難治性のガンに効く薬の組み合わせ)に変えたらみるみる抜け始めてほぼ完全に抜けた(全身の毛・眉毛・まつげも)。
(No.003) シスプラチンの治療の時は1回の投薬後、ごっそり髪が抜けてほぼ残らなかった。その後、以前と同じではないが生えてはいた。(ITECの)カルボプラチンに変わってからは、髪の毛はもちろん、眉毛・まつ毛までまるっきりなくなった。
(No.007) 脱毛はあった。
(No.010) 気になるほどではなかった。
(No.017) シスプラチンとTHP-アドリアマイシンの1コースで半分くらい抜け、2コース目で眉毛とまつ毛も抜けた。術後の2コースとITEC・造血幹細胞移植を1コースずつやり、残りの毛も少しずつ抜けていったが、最終的にはわずかな毛が残った。
(No.018) 治療の1,2回目はほとんど抜けずに終わり、3〜4回目にかけて徐々に抜け始める。手術後の5〜6回目には明らかな脱毛はなかった。最終的には、薄いところと濃いところとまだらな感じで部分的に髪の毛が残った感じであった。

粘膜障害
(No.001) 治療中は便秘というわけでもないのに、腸の中を便が動く時に痛がることが何度かあった。
抗がん剤の影響で唾液も少ないそうで、虫歯が出来やすいため2ヶ月に一度フッ素を塗ってもらっている。
(No.007) 口内炎になった。
(No.017) 造血幹細胞移植では必発と言われていたので覚悟していたが、とくに下痢だけがひどく、白血球が2000になっても2週間ぐらいは続き、トータルでは1ヶ月くらい続いた。
(No.018) 口内炎になった。また、手術後の治療5回目の時に下痢が2週間続いた。整腸剤を2種類服用して徐々に止まった。

吐き気・嘔吐
(No.001) シスプラチンはかなり嘔吐と吐き気が強かった。吐き気止め(カイトリル)を投与しながらだったが、それでも6時間の間に11回吐いたこともあった。
(No.007) 吐き気止めを入れていなかったので、かなり吐いた。
(No.010) 吐き気はあったが、薬でしのいだ。
(No.017) 最初の2コースは食欲がなかったので、吐くことはなかった。術後2コースとITECの時は数回吐いていたが、吐いた後はすっきりしたせいか、元気だった。造血幹細胞移植の時は、さすがに治療を開始してから3週間くらいは薬を飲んだだけでも吐いていた。
(No.018) 毎回治療の3日間は吐き気止めを入れてもらった。しかし、粉の飲み薬を服用する時にはよく吐いた。治療4回目と手術後の5回目の時は特によく吐いた。逆に、最終治療の6回目は1回も吐かなかった。

肝機能障害・腎機能障害
(No.001) うちは出なかったほうだが、それでもASTとALTが300を超えた。肝機能が悪くなると食欲がなくなり、なぜかやたらと水分を欲しがっていた。腎機能障害は治療中多少あったが、終了後はなんともなかった。
(No.007) 軽いものだったが、肝機能障害はあった。
(No.018) あきらかな肝・腎の機能障害はなかった。それに、もともとの腎疾患があったが、その疾患の異常も悪化することはなかった。

聴力障害
(No.001) シスプラチン6コースやった時点ではなんでもなく、ITECのカルボプラチンにし始めてから下がりだし、治療が完全に終了して数ヶ月してからかなり落ちた。その後も風邪や疲れなどの負荷が身体にかかるとずるずる落ち、そのたびにステロイドを内服して少し回復するものの、高音域のベースとしては悪くなっていった。
4000ヘルツから8000ヘルツで70〜90デシベルの間になった頃、小学校入学と重なり、高音急墜型の難聴にも対応出来るデジタル補聴器を使用し始めた。
(No.003) やはり高音部でかなりの低下があったが、退院後2年が過ぎて日常生活で支障をきたすことはない。
(No.017) 造血幹細胞移植の終了後の検査で、高音が聞きづらくなっていると言われた。今のところ日常生活には問題はないと思う。
(No.018) 日常生活に支障はないが、高音域の低下はある。

心筋障害
(No.001) 全然なんともない。
(No.003) 6コース終えて治療薬を変えたすぐの検査(心エコー)で中程度の逆流があり、心配したがその後悪くなるようなことはなかった。
(No.018) あきらかな心筋障害はなかった。それに、もともとの心疾患で生後すぐに開胸手術を施行しているが、異常なかった。すべての治療・手術を終えて退院する時に心エコー検査をしたが異常なかった。

出血性膀胱炎
(No.001) 治療中は尿潜血がわりとあったが、降圧利尿剤でなんとか乗り切っていた。
(No.006) 3クール目を始めたころから、尿中に赤血球が混じり始め、真っ赤な血尿が出るようになった。なかなか治らず、おしっこのたびに痛さで泣いていた。
(No.018) 異常なし。

けいれん
(No.002) 初めて使った時、1日目は無事に終了し、2日目に起きた。イフォマイドが終了してVP-16を開始した数分後、お昼寝から覚めて抱っこした時にいつもと違う抱き心地だったので、一応看護師さんに報告した。それから数分していきなり起こり、先生が駆けつけて5分程度で治まった。イフォマイドを止めてしまうと抗がん剤の力が弱くなるとのことで中止にはならず、その後1日の量を減らしてもらい、予防にフェノバールやフェニトインというけいれん止めの薬を治療前と治療後に服用するようになってからは、一度も起こらなかった。
うちの子の場合、けいれん止めの薬を服用するようになると食欲が減退し、吐き気が出た。
(No.018) 治療のためのけいれんはなかった。しかし、もともと「てんかん」があり、抗けいれん薬を服用している。入院中に数回けいれん発作を治療と関係なく起こした。

アナフィラキシー・アレルギー
(No.001) アナフィラキシーはなかったが、血小板輸血の時にアレルギー症状がたびたび出た。主にじんましんのひどいものだったが、短時間で全身に広がるので、「かゆい」というよりも「痛い」と言っていた。
(No.007) 輸血によるアレルギーはやはりあった。
(No.018) 輸血によるアレルギーはあった。特に、手術後の治療5回目の後は、血小板や赤血球ともに輸血すると湿疹が出ていた。輸血量の後半になり湿疹が出たのがほとんどだったので、残りの輸血は中止になった。

関 節 痛
(No.002) 2回目の入院の時、ひざやひじの関節を痛がっていた。特にひざが痛いようで、すっとさすってあげた。夜中も看護師さんにずっとさすってもらっていたようだ。痛み止めの薬を入れてもらった。こんな副作用があるとは知らなかったのでびっくりしたが、あるとのこと。1〜2日で治まった。その1回きりでその後の治療の時は大丈夫だった。
(No.018) 異常なし。

骨の成長が遅い
(No.001) 2才から3才まで治療していたので、歯の生え方が遅いらしい。6才の時点で1〜2年遅れのよう。その後歯の根っこが短かったり、生えてこない永久歯もある(21才現在)。身長は小さめだが、内分泌科で検査したところホルモン等は正常値(少ないけれど)。
(No.010) 身長、体重は入院中ずっと横ばいだった。
(No.018) 入院生活の6ヶ月半は、身長、体重ともに変化なく横ばいだった。

血色素症(ヘモクロマトーシス)
(No.001) 輸血のしすぎで血色素症というのになった。他人の血を何度も輸血することで肝臓に鉄分が付着して白っぽくなったとのことだったが、当時肝機能障害が出ていたので、ただの肝機能障害との症状の違いはよくわからない。
(No.002) けいれんと関節痛以外の副作用はほぼ会員番号001と同じ。
(No.018) 異常なし。

ノカルジア
(No.003) 化学療法を残すところあと2回となった頃(全12回のうち10回終了後)、37度後半の発熱・背中の痛み・咳の症状が続き、治療を延期。レントゲン、CTの画像の結果、肺に結節を認める。画像上は肺転移。しかしAFPは正常値。医師の見解は割れた。同じような症例がないため、万が一の場合を考え生検を行うこととなった。
結果は「肺転移」ではなく、「ノカルジア」という微生物による感染症。
「ノカルジア」は普通土の中などにいるもので特に人間に悪さをするようなものではないらしいが、長期の化学療法を行うとこのような症状がまれに出るとのこと。治療はST合剤(バクトラミンC)を増量して服用し、治った。

腸 閉 塞
(No.005) 手術の後に食欲は回復したものの胃が受け付けず、吐いてばかりでどうしたことかと思っていたら、イレウス(腸閉塞)を起こしていた。しかも2回。そのために術後に2度開腹手術をした。

低カルシウム・低マグネシウム血症
(No.007) ランダ(シスプラチン)の影響でカルシウムとマグネシウムが不足となった。

発熱・せき・鼻水
(No.007) 術前の動注に使った薬(薬の名前は分からない)で、38〜39度異常の熱が数日続いた。それと原因不明のせきと鼻水が始まった。
(No.018) 治療とは関係ないが、入院中に何回か風邪をひいたりした。それにもともとぜんそく気味だったので、1日3回の吸入とホクナリンテープはかかさずに予防のために行った。

便   秘
(No.007) ラキソベロンや浣腸をしてもらった。

血球貪食症候群
(No.017) 最初の治療中の骨髄抑制が始まってから「血球貪食症候群」という病気になった。
症状としては、40度以上の高熱が続き、血液検査ではフェリチンとLDHの値が高くなり、放っておくと多臓器不全になるとのこと。原因としては、感染症になってからの場合と腫瘍から起こる場合があり、うちの場合は腫瘍が原因で起こったらしく、手術で摘出するまで治らなかったため、手術の前日までプレドニン(ステロイド)を投与した。(手術の日程が決まってからはシクロスポリンに変更)

鼻   血
(No.018) 血小板は数値的には十分あるのに、数回鼻血を出した。

ほ く ろ
(No.001) 治療終了後から「ほくろ」がたくさんできるようになった。シスプラチンの影響との説明を受けた。

その他の症状
(No.007) 原因の分からない湿疹と食欲減退。



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